ぜみそ汁は沸騰させてはダメなのか? 意外と知らない基本を発酵食のプロに聞いた

2020/11/21 20:00 area

 みそ汁は朝食の定番ですが、発酵食品としてみその効能を考えると、新しい発見があります。みそ汁を朝に飲むのは理にかなっていて、みそ汁を沸騰させてはいけないと言われるのにも理由があるのです。改めて、みそ汁の魅力とその作り方の基本を、発酵料理研究家で『二十四節気のお味噌汁』(WAVE出版)を出版した山田奈美さんに聞きました。

*  *  *

「毎朝みそ汁を飲んでいます。朝はみそ汁だけという日もあります」
  と話す山田さん。山田さんにとって、みそ汁は健康維持の“飲む薬”だそうです。
 みそは、大豆に麹と塩を加え、微生物の働きで発酵させて作られる発酵食品。大豆そのものより消化吸収しやすく、アミノ酸などのうまみ成分をはじめ、さまざまな栄養素が豊富に含まれています。
「例えば、老化防止に役立つビタミンE、コレステロールを下げるレシチンやサポニン、女性ホルモンに似た働きをするイソフラボン、腸内環境を整える乳酸菌やオリゴ糖、代謝に必要な酵素などです。薬膳でもみそは胃腸を温め、気や血の巡りをよくし、解毒すると重宝されます」
 薬膳の考え方では、朝は排せつの時間。朝は1日の中で大腸が最もよく働き、不要なものを体外に出そうとします。朝ごはんは消化がよく、排せつを促すようなものを食べるといいそうです。 

  こうした点から、みそ汁は朝に飲むのが効果的といえます。腸内環境を整える栄養素を含み、消化がいいうえ、具となる野菜も食物繊維などが豊富で、便通を促してくれるからです。

  もちろん、身体にいいのは、朝に限ったことではありません。
「季節の野菜や魚介類をみそ汁に入れることで、さらにメリットが高まります。旬の食材は最も栄養価が高く、またその時期に起こりやすいトラブルを未然に防ぐ薬効を持っているからです」
 誰でも簡単に作ることができますが、みそ汁は決して沸騰させないことがポイントです。理由は風味が失われるからと昔から言われてきましたが、みそが発酵食品という点を踏まえるとそのポイントが理解できます。
「みその風味は微生物が作り出すアルコールなどの揮発成分によるものなので、沸騰させるとその成分が飛んでしまいます。また、ぐらぐら煮ると酵素も死んでしまいます。表面がぐらっと揺れる煮立ち始めの“煮えばな”が、火を止めるタイミングです。香りや風味が最もいい状態になります」

 みそ汁に不可欠な、だしの取り方の基本も押さえておきましょう。
「みそ汁にとって、だしはとても重要な存在。おいしいだしが取れれば、7割は成功したようなものです」
と山田さん。だしの種類や取り方にもいろいろありますが、最も使いやすく応用範囲が広いのは昆布とかつおのだしです。

「ぐつぐつ煮ると昆布のねばり成分やかつおの臭みが出て風味を損なうので、火加減には気をつけてください」

 
◎かつお昆布だしの取り方

【材料】

日高昆布:5センチ角2枚(約10グラム)

本枯節(かつお節):15グラム

水:1リットル

(1)  昆布の表面をふきんでさっと拭き、2~3か所切り込みを入れ、水に昆布を入れる。冷蔵庫で30分から一晩つけておき、鍋に移して弱火にかける。沸騰させないように注意する。

(2)  鍋の底から小さい泡が沸いてきたらかつお節を入れる。

(3)  さらに弱火で10分煮出し、火を止める。かつお節が沈んだらさらしなどでこす。保存容器に入れて冷蔵庫で2~3日は保存可能。

 他には、いりこ30グラム(黒い腸わたを取り除く)、水1リットルで取る「いりこだし」。“水出し法”は、まず、水にいりこを入れて一晩つけます。いりこを取り出し、加熱して使います。“煮出し法”は、水にいりこを入れて中火にかけ、沸騰したらアクを取りながら3~5分ほど煮出します。

 また、日高昆布5センチ角2枚(約10グラム)、水1リットルで取る「昆布だし」。昆布の表面をふきんでさっと拭き、2~3か所切り込みを入れ、水に昆布を入れます。冷蔵庫で30分~一晩漬けておき、中火にかけて加熱し、沸騰直前で昆布を取り出します。

 だしの取り方の基本を覚えたら、次は、具、だし、みその組み合わせも工夫。みそ汁をよりおいしく作るには、この3つのバランスをとることがコツです。堅苦しく考える必要はありませんが、まず、それぞれのだしにはうまみ成分の違いがあることを知っておくといいでしょう。

「昆布のうまみはグルタミン酸(アミノ酸系)、かつお節や煮干し、肉や魚はイノシン酸(核酸系)、干ししいたけはグアニル酸(同)という違いがあります。うまみ成分は1種類でなく種類の違ううまみを合わせたほうが、相乗効果でよりおいしく感じられます。例えば、先に紹介したかつお昆布だし。昆布のグルタミン酸とかつお節のイノシン酸という種類の違ううまみ成分が合わさることで奥行きのあるだしになります」

 こうした違いを踏まえて、山田さんに、だし、具材、みその組み合わせ例を三つ紹介してもらいました。みそにもさまざまな種類がありますが、今回は代表的なものとして、米みそ、豆みそ、白みその3タイプを取り上げました。米みそは、大豆に米麹を加えて作られる一般的なみそです。豆みそは、中京地方で作られる豆麹を使ったみそ。白みそは、麹の量が多い甘口タイプです。

◎かつお昆布だし+長芋+米みそ

 かつお昆布だしと米みそは最も定番の組み合わせで、どんな具材でも合わせやすい。秋が旬の長芋もみそ汁にぴったり。具材を焼いたり炒めたりすればさらにコクやうまみが出る。

◎いりこだし+にら(うま味野菜)+米みそ

 いりこのイノシン酸にうまみ野菜のグルタミン酸を合わせて。春が旬のにらだが通年手に入りやすい。ピリ辛にして豆みそにしてもコクが出る。

◎昆布だし+牡蠣+白みそ

 うまみ成分のコハク酸を含む貝類や核酸系のきのこや海藻には昆布だしで十分。素材の色を生かしたいときは白みそがおすすめ。

 11月中旬は二十四節気では「立冬」にあたり、木枯らしが吹いて、冬の訪れを感じます。空気も乾燥して干し野菜作りにも向く季節。切り干し大根ならうまみが凝縮していて、だしがいらないほど。えのきだけやしいたけは使う前に天日干しすれば、うまみが増してさらにおいしくなります。

 旬の食材を取り入れて、「薬になるごちそう」のみそ汁生活を始めてみてはいかがでしょうか?

取材・文/スローマリッジ取材班 時政美由紀

■山田 奈美(やまだ なみ)/薬膳・発酵料理研究家。国際中医薬膳師。「食べごと研究所」主宰。神奈川県葉山町のアトリエ「古家1681」にて、「和食薬膳教室」「季節の仕込みもの教室」「発酵教室」「離乳食教室」などを開催。近著は『二十四節気のお味噌汁』(WAVE出版)。





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